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生物学 今井 元 准教授

研究内容

・哺乳類胚の頭蓋顔面領域におけるパターン形成に関する研究

・顎骨格の形態形成を決定する中脳後脳境界域からのシグナル分子の同定と機能解析

・神経堤細胞の移動と分化を再現する培養系を応用した歯髄細胞による機能歯再生法の開発

・哺乳類の発生過程における頭部内中胚葉の移動から最終分化までを再現できる系の開発

哺乳類における摂食調節関連神経核とニューロンの発生過程を再現する培養法の開発

摂食中枢とネットワークを形成する成長/生殖調節神経の発生を再現できる培養系の開発

・妊娠初期の薬物服用による頭部神経堤の遺伝子攪乱が原因不明の顎顔面奇形の一因か?


今後の研究予定

哺乳類の顎顔面は、口腔外胚葉・前方中軸内中胚葉・頭部NCC・頭部中胚葉などの細胞に由来するが、咽頭胚期の顎顔面原基(鰓弓や鼻隆起)が形成される頃には、 神経管形成に伴うダイナミックな細胞の移動・接着・増殖によりそれらの存在領域は不明瞭になる。しかしながら、齧歯類では、これらの細胞が1枚のシートとして外胚葉層や内胚葉層に存在する瞬間(頭褶期〜神経板期)がある。本研究室の今井等は、この一瞬の時期特異的な初期発生の原理に着目し、 頭褶期〜神経板期の外胚葉層の神経堤や前神経褶(ANR)・内胚葉層の脊索前板を蛍光色素(DiI,DiO)により標識することにより、それらの胚葉に由来する細胞の接着や移動を歯胚(業績1-3)・ラトケ嚢や間脳(業績4)などの器官原基に分化するまで可視化し、更に、前方中軸内中胚葉の除去実験やアデノウイルスを用いた遺伝子導入によって、前方中軸内中胚葉が視床下部・下垂体・歯胚の発生過程に必須であることを示した (業績2,5)。また、鳥類胚を用いた移植実験において、中脳から後脳前方のNCCがメッケル軟骨を形成する為には、その移動経路にある中脳-後脳境界の神経板(神経外胚葉) 及び 頬咽頭膜周囲の上皮(外胚葉/内胚葉)との部位特異的な胚葉間の相互作用必須であることを明らかにしている(業績6)。また、α-MSHの食欲抑制作用を媒介する受容体をもつ室傍核の MC4-R発現ニューロンが、 迷走神経背側運動核とネットワークを形成していることを明らかにした (東京医科歯科大学教養部研究紀要 42:37−46, 2012.)。さらに、催奇形性の研究については、フルシトシンによる過剰肋骨の原因がHox遺伝子群の攪乱であることを明らかにした(業績7)。

【今後の研究】においては、上記の発生学的知識と独自の微細顕微操作のテクニックを用いて、HFMとその亜型であるGoldenhar症候群などの原因不明の顎顔面奇形の一因に、妊娠初期の薬物服用による頭部神経堤の遺伝子攪乱がなのかどうかを探る研究を行う予定である。

業績1) Imai H et al. (1番目):Contribution of early-emigrating midbrain crest cells to the dental mesenchyme of the mandibular molar tooth in rat embryos.  Developmental Biology 176:151-165, 1996.

業績2) Imai H et al.(1番目):Contribution of foregut endoderm to tooth initiation of mandibular incisor in rat embryos.  European J. Oral Science 106: 19-23, 1998.

業績3) 今井 元:ラット胚における頭部神経堤細胞と前腸内胚葉の歯胚形成への寄与 -長期下顎器官培養の応用- 歯科基礎医学会雑誌 41: 268-281,1999. 

業績4) Kouki T,  Imai H, Aoto K et al.(1番目と同等貢献度の共同執筆者):Developmental origin of the rat adenohypophysis prior to the formation of Rathke’s pouch. Development 128: 959-963, 2001.  

業績5) Aoto K, Shikata Y, Imai H et al.(8名中3番目): Mouse Shh is required for prechordal plate maintenance during brain and craniofacial morphogenesis.  Developmental Biology 327: 425-432, 2009.

業績6) 今井 元(1番目):鳥類胚のメッケル軟骨形成に対する中脳後脳境界域と頬咽頭膜組織の重要性について 口腔病学会雑誌 79(1):15-25, 2012.

業績7) Kumamoto T,  Imai H, Suzuki R et al.(8名中5,6番目):5-Fluorocytosine induces fetal skeletal malformation in rats by altering expression of Homeobox genes. Fundam. Toxicol. Sci. 7(2): 97-103, 2020 .

 


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口腔機能分子生物学講座 生物学 


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