歯学部
物理学教室は昭和47年の開学を控えて、当時都立大学に勤めていた永倉俊充教授が開講の準備に携わり、同年4月の開学で、浦島新男助教授、岩崎高敏助手が着任して、授業と実習を通して、第一期生の一般教養科目、基礎教育科目としての物理学教育を開始した。昭和49年4月には青木潔助手も加わり、4人で物理教育に携わる体制がしばらく続き、また学内の電算機共同施設の設置にあたっても積極的に関与した。昭和60年3月に永倉教授は退職され、その後を浦島教授、岩崎講師、青木助手の3人で教室の教育研究活動を支える時期が十年余り続いた。平成6年10月から奥羽大学歯学部数学教室に着任していた、菊地尚志講師が助教授として平成8年4月に物理学教室に合流し物理と数学を兼務した。その10月に浦島教授は退職し、また平成13年4月には岩崎助教授が数学教室に移った。数学教室に移動後も物理学実験などで物理学の教育に関わっていた岩崎准教授は平成24年3月に退職された。平成27年度の現在、物理学教室は、菊地教授が1年次開講の「基礎物理学」と「統計数理学」の授業を、また青木准教授が2年次開講の「物理学」の授業を担当し、またふたりで1年次の「物理学実験」の実習教育に携わっている。
歯科大学での物理学教育を考える時真っ先に頭に浮かぶのは、将来、学生達は歯科医師として患者のレントゲン写真をとり、虫歯の歯を削って詰め物をし、また、矯正器具のように小さくはない力を歯列に架ける器具を患者の歯に固定することになるのだから、X線や放射線、力学、様々な歯科材料について安全で正確な物理的知識を持つように教育をすることである。ただし本学では、大学入学の時点以前に物理学を勉強して来た学生の割合いが非常に低い。従って、歯科医師として要求される物理の専門的な知識についての教育に入る前のより基礎的な事柄についての教育が欠かせない。この基礎的な知識から専門的な知識への理解が連続的に進むことを考慮して、1、2年次での物理学教育を構築して来た。
さらに加えて、教養としての物理教育にも考慮を払う必要がある。治療前説明と患者の同意を得ることなど、患者との的確な意思疎通ができる能力を持つことが、これからの歯科医師には社会的に要求される様になった。そのような能力は、医師がもつ教養の広さに大きく影響されることは想像に難くない。専門知識を持たない患者に、診療に関する判断を客観的で説得力のある言葉で表現することは、専門的な知識のみに固まってしまった脳みそには不可能である。現象を客観的に観測し、その観測結果を理性的に判断し、結論をレポートや論文の説得力のある文章にまとめて人に伝える能力は物理学においては特に重要とされるものであり、本物理学教室においても学生がそのような教養を培えるような教育に配慮して来た。このような教養教育は本学の教育理念である「豊かな人間性を育てる」上でも必須の項目である。
【論文】